1970 年 59 巻 4 号 p. 309-318
気管支喘息の病態について形態学的に検索する目的で7例の主気管支生検を行ない,対照の慢性気管支炎例と比較検討した.好酸球浸潤はステロイド使用中の症例を除き,他の全例に種々の程度に認め,基底層の硝子様肥厚は全例に,さらに平滑筋肥大を1例に認めた.とくに喘鳴時生検例においては拡張した細血管ないし毛細血管周囲の好酸球浸潤とそれに接する基底層の透過性亢進を推定せしめる所見を得,喘鳴時の気道の病態を形態学的に捉え得た.対照に用いた基底層肥厚の慢気例では透過性亢進の所見は一部に軽度に認められたのみであり,好酸球浸潤はみられなかつた.気管支壁肥満細胞は数の点では対照の慢気例共に炎症細胞の消長とよく一致しており,脱顆粒を含めた異常細胞出現については感染合併の気喘例に多くみられた.肥満細胞の脱顆粒と気喘との関連については今後気道の炎症を伴わない例についてさらに症例を重ねて検討さるべきである.