日本内科学会雑誌
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原子吸光分析法による亜鉛の定量とその臨床的意義にかんする研究
松之 裕之
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1971 年 60 巻 3 号 p. 203-214

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抄録

まず原子吸光分析法を生体試料の亜鉛定量へ応用する際に必要な基礎的検討を行なつた.本法を用いると試料の前処置が簡単であり,分析の迅速化・簡易化をはかることがでぎ,さらに精確度の点においても優れていることがわかつた.つぎに亜鉛定量法として本分析法を用いて疾患時,とくに消化器ならびに癌疾患における亜鉛代謝の様相と変動の意義について追求した.その結果,血清亜鉛量は肝疾患では明らかに減少し,とくに肝硬変症で著しく,悪性腫瘍でも減少傾向を示すが,悪性リンパ腫では全例に著しい低下がみられた.胃癌組織では非癌粘膜層に比べ明らかに亜鉛量が多かつた.また胃癌胃液の亜鉛量は正常胃液に比べ高値をとる傾向がみられた.したがつて,血清・胃液亜鉛量の測定は上記疾患の補助診断法として有用である.腫瘍移植ラットでは腫瘍の増大に伴なつて血清亜鉛量は漸次低下を示し,これと時期を同じくして,肝・腎亜鉛量の増加がみられた.

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