日本内科学会雑誌
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強力超音波照射の心筋に及ぼす影響
超音波による焦域および硬塞治癒過程の修飾についての基礎的実験
山中 義忠
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1971 年 60 巻 6 号 p. 528-538

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抄録

強力超音波の心筋への照射とその影響についてはその報告は僅かである.本研究の基礎実験は集束超音波を生体模型としてのメタアクリル樹脂に照射し,心筋に照射する際の定量的資料を得るにあつた.次に,これを参考にイヌ心筋的に集束超音波焦域,すなわち硬塞様破壊巣を作製し,その焦域の経時的組織学的検討から心筋硬塞治癒機転に超音波照射が興味ある変化を与えるとの示唆を得た.主実験は,この示唆に基づき治療用強度の平行超音波を冠状動脈結紮犬の実験的心筋硬塞巣に照射し,その硬塞部の経時的な病理組織学的検索をしたもので,照射犬の硬塞部には対照に比し明らかな壊死部縮小と少ない線維化をみた.この所見は,照射によるより高度な血管新生拡張と食細胞を主とする強い細胞浸潤など活発な間質反応が,旺盛な壊死組織の吸収とコラーゲン新生の抑制を惹起するためと推定された.本論文の結論は,以上超音波照射が実験的には心筋硬塞治療に有用なる点を指摘したことにある.

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