日本内科学会雑誌
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インスリン自己免疫を示す低血糖症について
平田 幸正西村 ひろみ富長 将人石津 汪有道 徳小串 俊雄大内 伸夫本村 正治仲村 吉弘
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1972 年 61 巻 10 号 p. 1296-1304

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抄録

従来,インスリン未使用例の血中にインスリン結合抗体を証明したという報告はなかつた.しかし,最近3年間にインスリン自己免疫の存在を思わせる3症例を経験することができた.これら症例には次のような共通点が認められた.(1)臨床症状は自発性低血糖であり,いずれも低血糖発作が受診の動機となつた.(2)職業,病歴などからインスリン注射の機会はなかつたと考えられる.(3)血清中にインスリン結合抗体が存在し,またその血清から正常者の約100倍の高濃度のインスリンが抽出された.このインスリンは免疫学的にヒトインスリンに一致した.(4)ブドウ糖負荷試験において糖尿病型の血糖反応が示された.(5)3例中2例において膵切除が行なわれたが,膵Langerhans島の過形成が著明であり,インスリノーマは存在しなかつた.以上から,インスリンの自己免疫に関係する一つの症候群が存在するものと考えたい.

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