急性骨髄性白血病としての治療経過中に,いわゆる脊髄横断症状を呈した症例を経験したので報告する.患者は67才の男性.主訴は排尿痛,出血斑・発熱・倦怠感である.入院時の検査所見で,中等度の貧血と栓球減少があり,末梢血および骨髄像で骨髄芽細胞を認めたため,急性骨髄性白血病と診断して治療を始めた.血液所見および自覚症は順調に改善したが,入院後2カ月頃より食欲不振を訴え,前胸部皮下に腫瘤が出現,X線像でも胸骨後部に腫瘤陰影を認めた。さらに背部から胸部にかけて神経痛様疼痛が起り,ついで下半身の全知覚脱失・下肢の弛緩性対麻痺・膀胱直腸障害のいわゆる脊髄横断症状を呈し,次第に衰弱して全経過約6カ月,脊髄横断症状発現後約1カ月の経過で死亡した。剖検の結果,前縦隔・後腹膜・膵臓等に緑色腫の腫瘤形成と上部胸髄(IIないしIV)の軟化壊死を認めた.