日本内科学会雑誌
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異所性parathyroid hormone産生の原発性肝癌の1例
後町 洋一長井 忠則西家 〓仙石谷 邦彦名取 博福田 守道漆崎 一朗森 道夫藤田 拓男
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1973 年 62 巻 12 号 p. 1671-1677

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抄録

本来hormoneを産生しない臓器から発生した腫瘍組織がhormoneを産生するものを異所性hormone産生腫瘍と呼んでいる.この異所性hormone産生腫瘍は,癌細胞の偏倚および発癌機構の解明に示唆を与える材料として注目されている.異所hormone産生腫瘍の直接的表付けは,腫瘍組織中に含まれるhormoneが有意に高いことの証明である.今回われわれは,63才,男性で,肝腫張,腹水を来たして来院し,α-fetoproteinが強陽性で,超音波断層像,血管造影などから原発性肝癌と診断し,経過中に著明な高Ca血症を認めた症例を経験した.本例の血清,腹水および腫瘍組織中に異常高値のPTHをradioimmunoassayにより証明し,剖検後の病理組織学的検索では,脇上皮化性型腺癌の像が主体であるが,索状配列の部位もあり多彩な縁を呈した.本例はα-fetoproteinと異所性hOrmoneの産生機序を考察するうえで示唆に富む症例と考えられたので報告する.

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