右肺動脈上行大動脈起始症(origin of the right pulmonary artery from the ascending aorta)は右肺動脈が上行大動脈より直接分岐する先天性奇形であり,しばしば動脈管開存症を合併している.本症は比較的希な奇形であり,欧米では40例前後,本邦では9例の報告があるにすぎない.本邦例のうちそのほとんどが小児例であり,本例は25才であることから本邦最年長例と思われる.本例は右心カテーテルおよび逆行性火動脈造影にて右肺動脈が完全に欠損し,上行大動脈より直接分岐していることを確認した.本例はRosenbergの分類のtype IIである.さらに本例の臨床的所見について述べ,本症の発生学的要因および血行力学的状態についての文献的考察も行なつた。なお本例は現在経過観察中である.