1973 年 62 巻 5 号 p. 479-484
Von Willebrand病は,血小板凝集能は正常,粘着能は低下の傾向にあるとされて来たが,われわれの経験した20才,男子症例は,そのcitrated platelet-rich plasma (CPRP)を用いての血小板凝集能はBornのoptical density methodでadenosine diphosphate (ADP)により一次・二次凝集曲線を得,その凝集の強さも正常範囲内,また,倍数稀釈したADPをCPRPに加えて凝固の起こる閾値をみても, 2-13mg/mlと正常であり,また, Moolten and Vromanの方法による粘着性栓球数測定では,全栓球数に対する粘着性栓球数の割合が16%と,正常に比し著明に低下していた.しかし, Swankのscreen filtration pressure法によるクエン酸加全血を用いての凝集能は,正常者に比し明らかな低値を示した.最近,血小板の粘着と凝集は密接に関連し画然と区別し得ないのではないかとの批判がなされており,本例の所見は,本症の病態のみならず,血小板機能測定法の意義にかんしても興味深い.