日本内科学会雑誌
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長期間持続した後天性メトヘモグロビン血症の1例
水谷 哲郎友松 達弥吉武 桂
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1973 年 62 巻 5 号 p. 490-496

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抄録

後天性メトヘモグロビン血症の1例を経験し約10年間の経過を観察した.発症当時,患者は20才の女性で,約1年4ヵ月の易疲労感,頭痛,四肢脱力感の自覚症の後に初めてチアノーゼの出現を認めた.チアノーゼ出現期には歩行障害,四肢冷感とともに口褐,多尿などの多彩な臨床像がみられた.患者赤血球の代謝的検により,赤血球内還元機構は正常であるが,酸化防禦機構の障害のためにメトヘモグロビン血症が発生したことを明らかにした.さらに赤血球外因子の関与を推定したが,明確にはし得なかつた.患者は4ヵ年に及ぶ間歇的チアノーゼ出現期を経過した後,漸次自覚症状の改善とともに,チアノーゼの出現を認めなくなつた.チアノーゼ非出現期に患者赤血球の代謝的検索を含めた血液学的検査は正常化を示し,現在にいたるまで再発を認めていない.

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