1973 年 62 巻 5 号 p. 497-501
大動脈炎症候群は,わが国に比較的多く,欧米では希な疾患であるが,その成因は,現在まだあきらかとされていない.しかし,本症の発生機序に,なんらかの免疫機構が関与している可能性は十分考えられるとされている.本症の経過は,急性期と慢性期に分けられるが,実際は発病時期がはつきりしない場合が多く,また,初期に発熱などの全身症状がたとえあつても,本症に特有な臨床所見が出現するまでは,本症を診断することはきわめて困難である.われわれの報告例は21才女子で,比較的早期に本症と診断された症例である.本例の診断は,最終的には,手術時に得た腹部大動脈および腎動脈の病理組織像によつて確認された.本例にみられた興味ある所見は,1) Kveim反応が陽性であつたこと, 2)入院時のッ反(PPDs 0.5/γ 0.lml)が陰性で,ステロイド投与後,あきらかに陽性となつたこと,の2点である.このような現象は,元来,サルコイドーシスに特有とされて来たものであるが,本例にもみとめられたことは,まことに興味深い.しかしながら,本症と,サルコイドーシスとの関連性,などにかんしては,今後の検討を必要とする.