日本内科学会雑誌
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橋本病に合併したびまん性間質性肺線維症の1剖検例
山口 康平加藤 允義
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1974 年 63 巻 12 号 p. 1428-1435

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抄録

典型的な自己免疫疾患である橋本甲状腺炎とびまん性間質性肺線維症の合併例について報告した.症例は68才の女性で, 20才頃よりびまん性甲状腺腫があり,死亡の約8年前より,咳嗽,呼吸困難などの呼吸器症状を呈し,胸部X線像上,びまん性の線状・網状影が認められ,副腎皮質ホルモンの投与で自覚症状は一亘軽快したが,肺の異常陰影は次第に増悪し,死亡した.剖検にて,両肺はいわゆるびまん性肺線維症の所見を呈し,急性間質性肺炎から定型的な蜂巣肺に至る新旧種々の病変が混在しており,甲状腺では実質の破壊が高度で,線維増殖の強い橋本甲状腺炎の所見を認めた.びまん性肺線維症は,原因の明らかなもの,全身系統疾患の表れと考えられるもの,原因不明のものの三つに大別されている.原因不明のものの成因については,従来から,感染説,リウマチ説,自己免疫説などが挙げられているが,最近,本症に高ガンマグロブリン血症を伴う例が多く,種々の自己抗体が証明されることや,いわゆる自己免疫疾患を合併する例があることなどから,本症の発生における免疫異常の重要性が強調されている.われわれの例では,代表的な自己免疫疾患である橋本病が合併していたこと,リウマチ因子やLE因子が出現したことなどは,本例の肺病変の発生進展に免疫異常が関与していることを示唆するものであり,びまん性肺線維症の成因を考える上で,極めて興味深い症例と思われる.

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