日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
自己抗体とその病因的意義
粕川 礼司
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 64 巻 1 号 p. 1-13

詳細
抄録

自己抗体および自己免疫疾患の意味を正しく理解するため,まず,異種,同種,自己という言葉を明らかにし,ついで,動物で作られた自己免疫疾患を,歴史的にたどりながら,両者の意味と相互の関係を概観した.流血抗体の病因的意義を考察する際,次の3項の検討が重要であると思われる. 1)対応抗原が抗体にaccessible (接触可能)か, inaccessible (隔絶)か. 2)抗原が生食水に可溶性か不溶性か. 3)抗原が標的細胞の膜表面に存在するか,細胞内にあるか.これらの観点から,ヒトにおける,一般によく知られた自己抗体と著者が経験した自己抗体とを例挙しながら,各抗体の病因的意義を考察した.著者が経験した自己抗体として, 1)抗組織寒冷凝集素. 2)トリプシン処理ヒトO型血球凝集素. 3)慢性糸球体腎炎患者にみられた抗組織抗体. 4)培養細胞膜抗原と反応する抗体(慢性糸球体腎炎,慢性関節リウマチ,アミロイドージス)を紹介した.この中で,健常人にもみられる自己抗体として,いくつかの自然抗体を示した.特異な自己抗体としてのリウマトイド因子に関し,この抗体が真に自己抗体か,或いは同種抗体かを論じ,この抗体の病因的意義を, 1)補体を結合するか. 2)補体と競合するか. 3)病変組織に認められるか.の3点から,著者の実験を基にして検討した.最後に,自己免疫病からimmune complex病へと移り変る免疫病にみられる,最近の概念の変化に言及した.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
次の記事
feedback
Top