日本内科学会雑誌
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IgA単独欠損症の成因にかんする一考察
獲得性IgA単独欠損症3症例の証明
加納 正丹羽 靱負山口 希
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1975 年 64 巻 12 号 p. 1353-1360

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抄録

IgA単独欠損症は健康人にみられることがあるが,多くの場合各種の疾患に随伴する.しかし,それらの疾患との関係は不明であり,今日広く採用されているWHO分類でもIgA単独欠損症は原発性免疫不全症の一病型として取扱われている.今回著者らの示した3症例,すなわち(1) 1947年生女性, SLE慢性甲状腺炎, (2) 1913年生男性,結節性動脈周囲炎(疑), (3) 1952年生男性,髄膜腫による症候性癲癇・Recklinghausen病などでは,いずれもIgA単独欠損症が経過中に発現したことを確認し得たものである.現在までに,同様の症例は2例知られているが,単なる事実の確認に終り,免疫学的検索がなされていないし,その成因についても考察されていない.著者らの3症例はIgA単独欠損症の獲得型が明らかに存在することを示す貴重な症例である.また少なくとも症例3ではIgA欠損が可逆的であることも示された. IgA単独欠損症のすべてが原発性もしくは先天性であるとする見解は否定された.獲得型の成因にかんしては, (1)抗IgA抗体による自己免疫機序(続発性獲得性), (2)薬剤(この場合抗癲癇剤)の直接関与もしくは自己免疫機序を介しての関与(続発性獲得性), (3)原因不明(原発性獲得性)などが考えられた.

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