日本内科学会雑誌
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腎血管性高血圧の臨床的研究80例を中心に
阿部 圭志大塚 庸一斎藤 鉄男色川 伸夫青柳 春樹宮崎 青爾日下 隆清野 正英保嶋 実
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1975 年 64 巻 3 号 p. 222-231

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抄録

腎血管性高血圧症80例を対象として,本症の診断ならびに手術適応について検討を加え,さらに術後の血圧と血漿renin活性の変動についても検索した.定型的腎動脈主幹部狭窄例では日常検査を行なうことにより診断は容易であつた.しかし,分枝狭窄例では,静脈性腎盂撮影, renogram, renin分泌刺激試験のみが50%以上の症例で陽性に過ぎず,これらがすべて陰性で,血管撮影のみで診断できた症例もあつた.従つて諸検査に異常所見を認めず, renin分泌刺激試験で正常反応を示す症例でも血管撮影を行なうことが必要である.手術例49例をretrospectiveに検討した結果では,血管撮影上認められる側副血行路は手術適応の決定に大変有用であつた.すなわち,左右別腎機能検査ならびにreninの測定値(末梢血ならびに腎静脈血)に異常を認めず,側副血行路だけがみられる症例も手術適応になり,腎摘出術を行なう場合でも,対側腎の高血圧性病変の程度を検索した上での決定であれば適応と考えられた.手術後の血圧と血漿renin活性の変動は,腎血行再建群と腎摘出群では相違がみられた.すなわち,術後血圧の正常化は,血行再建群で腎摘出群より速かで,血漿renin活性の正常化は逆に,腎摘出群より速かであつた.この相違には虚血より開放された患側腎が大きな役割を果しているものと思われ,腎血管性高血圧の血圧維持機構における腎性抗昇圧因子の関与を示唆する成績であつた.

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