日本内科学会雑誌
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老年者脳卒中の発症要因
東儀 英夫山之内 博小川 真内山 伸治田渕 正康亀山 正邦
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1976 年 65 巻 12 号 p. 1415-1420

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抄録

脳出血27例,脳硬塞34例の剖検例について脳卒中発症の月別頻度,発症時の状況,発症1カ月以内前から発症後2日以内までにおける血液ヘマトクリット値,血清電解質,尿素窒素の変化を検討し,次の結果を得た. 1)脳出血,脳硬塞の発症は, 3~4月, 9~10月の季節の変り目に頻度が高かつた.この時期は老年者,とくに高血圧を有する老年者の平均血圧が1年間のうちで高く,あるいは動揺の激しい時期に一致した. 2)脳出血は入浴中あるいは入浴直後に起こすものが多く,脳硬塞は睡眠中あるいは起床時気づかれたものが多かつた. 3)発症前に比し発症後の血液ヘマトクリット値が上昇を示した症例は,脳出血,脳硬塞の約3/4の症例に認められ,尿素窒素の上昇は2/3の症例に認められた.血清総蛋白値は脳出血例の56%,脳硬塞例の80%に上昇が認められた.一方,血清K値は脳出血例の73%,脳硬塞例の60%が低下を示した.以上の所見から,脳卒中の発症要因として血圧の上昇,激しい動揺,血液ヘマトクリット値の上昇などが重要であると考えられた.

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