日本内科学会雑誌
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原発性ヘモクロマトージスの1家系
坪山 明寛佐々木 龍平高久 史麿溝口 秀昭三浦 恭定
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1976 年 65 巻 4 号 p. 340-346

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抄録

原発性ヘモクロマトージス(以下Hchr.と略す)の発生病理は,現在なお不明であるが,遺伝的要因が関与すると言われている.われわれは,家族発生ヘモクロマトージスの1家系を経験したので報告する.発端者は,症例1の40才男子.全身の色素沈着著明で,血清鉄334μg/dl, UIBC5μg/dl,肝,骨髄,皮膚,胃粘膜などで鉄沈着が著明で, desferrioxamineの投与により尿中鉄排泄量が著増し,鉄過剰状態の存在が明白であつた.軽度貧血,肝機能障害,インスリン分泌不良,尿中17-KS,血中テストステロン値の低下がみとめられた.症例2は,症例1の実妹で,血清鉄著増,鉄飽和率高値,組織への鉄沈着,肝障害,性腺機能障害,成長ホルモン分泌障害,強度の糖尿病がありHchr.の診断がなされた.症例1は,ヒューマンカウンターによる鉄吸収試験で,著明な鉄吸収の亢進がみとめられた.この2例の家族検索の結果9人同胞中5人が発症し,そのうち3人が若年女性であつた.患者の両親が近親婚があり,かつ両親は表現型としては健康であつたこと,いずれも比較的若年に発症している事から劣性遣伝が推定された.

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