日本内科学会雑誌
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Mycoplasma pneumoniaeの感染に伴つたmyelo-radiculo-neuritisの1症例
臼井 康臣岡本 進升田 隆雄恒川 洋向山 昌邦
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1976 年 65 巻 6 号 p. 589-595

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抄録

Mycoplasma pneumoniae (M. pn.)に伴う神経系の障害のうちpolyneuritis例については欧米で若干例の報告があるのみで,本邦では未だ報告されていない.著者らは知覚障害優位のmyelo-radicu-lo-neuritisの1症例において,その病因としてM. pn.の感染が想定された希有なる症例をここに報告した.症例は23才の男性.発熱,気道感染症状に続いて四肢の運動,知覚障害が出現.入院時(第9病日)扁桃,表在リンパ節の腫脹を認めた.神経系では,意識清明,項部強直なく,脳神経系ではVII脳神経障害,四肢,躯幹の異常覚,腱反射の高度低下,四肢末梢優位の軽~中度の表在覚,上肢に高度,下肢に軽度の深部覚障害が認められ,また筋力も軽~中度の低下を示した.臨床検査上,血沈の促進,寒冷凝集素価の上昇を認め,血清M. pn.に対するCF抗体価は初回64倍,以後低下を示した.一方fermentation inhibition抗体価は初回16倍,以後最高128倍に達した.髄液では,細胞数は初回114/3と増加を示したが以後は正常化し,細胞蛋白解離現象が認められた.腓腹神経生検像では中~高度の軸索,髄鞘の変性,脱落像が認められ,かつ太い線維により著明であつた. steroidの投与により4ヵ月後に四肢の知覚障害を残して退院した. M. pn.感染に伴うpolyneuritisの既報告例を検討し,知覚障害優位を示した本症例の特異性を指摘した.またM. pn.による神経系障害の機序として,直接侵襲およびアレルギー性機序などについて考察を加えた.

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