日本内科学会雑誌
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抗GPT (glutamic pyruvic transaminase)抗体を検出し得た慢性肝炎の1例
梶田 芳弘内藤 雅裕塩津 徳晃間嶋 崇哉宮崎 忠芳吉村 学越智 幸男伊地知 浜夫
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1977 年 66 巻 11 号 p. 1562-1567

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抄録

酵素結合性免疫グロブリンの存在は既にアミラーゼ, LDHの場合に証明され,現在自己抗体の観点から検索がなされている.逸脱酵素であるglutamic pyruvic transaminase (以下GPT)と結合する免疫グロブリンを血中に証明した報告は,われわれの知る限り未だない.今回125I-ブタGPTを用いて二抗体法,ゲル濾過法および放射性免疫電気泳動法により,血清中にGPTと結合する免疫グロブリンを認める症例を経験したので報告する.患者は49才,男子で,肺結核の治療中,肝腫大と肝機能異常に気付かれ,肝生検により活動型の慢性筋肝炎と診断した.検査所見では, GOT, GPTおよび血清γ-グロブリンの軽度増加を示すのみで,クームステスト,抗核抗体等自己抗体は陰性であつた. 125I-ブタGPTと患者血清を静置後, Sephadex G-200によるgel-filtrationでは放射能はvoid volumeに認めた.これは添加されたGPT (M.W.約115,000)が免疫グロブリンと結合したためと考えられた.この抗体はIgGのκ型と推定され,そのmonoclonalな性格は抗体産生側の失調を疑わしめた.また本患者の抗体は,その抗体を有しないGPT活性高値のヒト血清で標識ブタGPTがdisplaceされる事より,ブタおよびヒトGPT蛋白とも交叉反応を有する抗体と考えられた.この結果から,この抗体の存在時には血清GPT活性は真値を示さない事,さらに肝障害の慢性化に自己免疫的機序が関与している事が示唆された.

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