日本内科学会雑誌
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ネフローゼ症候群とポリニウロパチーを呈したIgD(λ)型多発性骨髄腫の1例
三戸 康義木嶋 祥麿笹岡 拓雄金山 正明
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1977 年 66 巻 12 号 p. 1733-1738

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抄録

IgD型骨髄腫はすでに多数の報告があるが,ネフローゼ症候群とポリニウロパチーの合併例はきわめて少ない.症例は, 37才の男性で職業は大工.主訴は複視,下肢異常感であつた.家族歴では特記事項なく,既往歴では17才の時,虫垂切除, 27才の時,右前額部と左眼部に外傷をうけている.入院の6カ月前より下肢異常感と複視が出現し, 2カ月前には歩行障害,胸痛,浮種,頭重感が加わつた.入院時には,眼検と下肢の浮腫,頭頂部腫瘤,左眼検と結膜の色素沈着を認めた.末梢血液像にて軽度の正球性正色素性貧血と連銭形成を認め,尿検査ではタンパクが強陽性でBence Jonesタンパクも陽性であつた.胸骨骨髄像にて41.6%の形質細胞を認めた.全身のX線検査では,頭頂骨,鎖骨,肋骨,脛骨に多数の骨融解像を認め,血清タンパク分画ではfast-γ位にM-peakを認め,免疫電気泳動法にて,抗IgDと抗λ抗体に対し沈降線を認めた.血液生化学ではBUN 33mg/dl, creatinine 2.6mg/dlと腎機能障害の進行をみた.入院後,顔面や四肢の浮腫が増強し,血清アルブミンの低下,高度のタンパク尿など,ネフローゼ症候群を呈し,神経学的には, glove and stocking type distributionの知覚障害,筋力低下,筋萎縮が出現,ポリニウロパチーを呈し,髄液ではタンパク細胞解離を示した.腎組織所見は,膜性増殖性糸球体腎炎に類似の像を呈し,アミロイド沈着は証明できなかつた.以上,アミロイド沈着の所見なくネフローゼ症候群を呈し,骨髄のタンパク細胞解離を伴うポリニウロパチーの症状を合併したIgD (λ)型多発性骨髄腫の1例を報告した.

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