日本内科学会雑誌
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肝外性閉塞性黄疸を初発症状としたヘパトームの1例胆管内発育したヘパトーム
川上 正舒北村 達也赤沼 安夫小坂 樹徳加藤 洋
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1977 年 66 巻 12 号 p. 1753-1758

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抄録

初期より閉塞性黄疸を呈した原発性肝癌(ヘパトーム)の1例を報告する.患者は51才男性で,全身倦怠感と高度の黄疸のため入院した. 10年前に慢性肝炎と診断されたことがあるが,常用薬物,手術,輸血等の既往は無い.入院時より黄疸著明で,手掌紅斑,くも状血管腫を認め,比較的硬い肝を触知したが,表面は平滑で腫瘤は認めず,肝機能検査では典型的な肝外性閉塞のパターンであつた.しかしHb抗原,およびα-フエト蛋白が陽性であり,さらに経皮経肝胆管造影で肝内胆管の著明な拡張とともに右主肝管内腔に茎状に発育する陰影欠損が認められ,ヘパドームの胆管内発育による肝門部閉塞と診断された.ドレナージによる減黄療法中,合併症の胃潰瘍より出血し,続発した敗血症のため死亡した.剖検にて,肝右葉に原発し,肝内胆管内腔を茎状に発育してその先端が肝門部を閉塞している.極あて特異な形のヘパトームが確認された.初期に黄疸を呈するヘパトームは希で,これまでに20数例の報告を見るに過ぎない.これ等はいずれも腫瘍が胆管内に発育したものであり,治療上,肝外性の閉塞との鑑別が重要であるが困難で,本例のごとく術前または生前に正しく診断された報告は見られない.本例の診断は,経皮経肝胆管造影,ならびにα-フェト蛋白, Hb抗原の測定が極めて有用であつた.

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