日本内科学会雑誌
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ホルモン産生の著明な変動を示した胸腺カルチノイドによる異所性ACTH症候群の1例
畑 俊一嘉手 納成之国田 晴彦慶松 元興伊藤 宜人小原 孝雄大滝 幸哉中川 光二鈴木 邦治中川 昌一
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1977 年 66 巻 3 号 p. 305-311

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抄録

著明なホルモン産生の変動を示した,胸腺原発カルチノイドによる異所性ACTH症候群の1例を経験した.症例は, 27才の男子で,主訴は,色素沈着,〓瘡,多尿,浮腫で,一般検査で,低カリウム血症,耐糖能の異常,代謝性アルカローシスなどが認められ,内分泌機能検査では,血漿ACTH, β-MSH,コーチゾールおよび尿中17-OHCS, 17-KSの増加が認められた.気縦隔造影,胸腺静脈造影などにより,胸腺腫の存在が確認され,胸腺摘出術が施行された.腫瘍組織から, ACTH活性が証明され,異所性ACTH症候群であることが確認された.本症例の興味深い点は,第1に,ホルモン産生の著明な変動がみられたことと,第2に,組織学的にカルチノイドであつたことである.入院当初,異常高値であつた,血漿ACTH,尿中17-OHCSなどは一過性にほぼ正常化し,それとともに,色素沈着,〓瘡,多尿,浮腫などの臨床症状および低カリウム血症は,一時的な改善を示した.腫瘍による著明なホルモン産生の変動やperiodic hormonogenesisは,極めて希で, O'Neal, Baileyなど数例の報告があるのみである.胸腺原発カルチノイドは,わが国では3例の報告があるのみで,内分泌症状を示した最初の報告であると思われる.

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