日本内科学会雑誌
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ヒト・アミラーゼアイソザイムの遺伝学的ならびに生化学的検討
尤 芳才
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1977 年 66 巻 9 号 p. 1239-1247

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抄録

薄層ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて, 3,650例の健常人血清,尿中アミラーゼアイソザイムパターンを検討した.アミラーゼアイソザイムは陽極側への易動度の遅いものより, Amy-1, 2, 3…と順次番号をつけ命名した. 98%以上の健常人血清および尿中アミラーゼアイソザイムは二つのmajor band(Amy-1と3)と2~3のminor bandよりなるが, Amy-1よりも易動度の遅いisozyme(Amy-1sと仮称)を示す症例と,本来minor bandであるAmy-2の活性が増強した症例を, 3,650例中おのおの0.19%および1.75%の頻度で認めた. Amy-1sは,血清,尿中共に認められ,同じ症例の膵液,膵組織ホモジネート中からも検出したが,唾液中には認めなかつた.分子量的には, Sephadex G-75 Superfine columnを用いた検討では膵アミラーゼと差がなかつた.このような事実からAmy-1sは膵由来のvariant amylase isozymeである事が判明した.またその出現は,疾患と関連なく,家系調査の結果,常染色体性優性遺伝形式を取る事を確認した. Amy-2の活性が増強した症例でも,血清,尿中膵液中にこのアイソザイムの活性増強を認めた.この様な症例も疾患との関連を認めず,その家系内で, 61.9%と高頻度Amy-2の活性が増強している症例を認めた事から,この活性の増強したAmy-2の出現も遺伝的背景を有している事が考えられた.

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