日本内科学会雑誌
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選択的IgA欠損症の2症例
末梢血リンパ球でのIgA産生異常
後東 俊博中山 拓郎田村 正和滝下 佳寛螺良 英郎平野 俊夫栗谷 太郎村口 篤岸本 忠三山村 雄一
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1978 年 67 巻 12 号 p. 1568-1574

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抄録

IgA単独欠損症解明には, IgA産生機構の障害を免疫生物学的にとらえる必要がある. IgA単独欠損症の免疫生物学的解析成績は極めて少なく, Delespesseら(1976), Waldmannら(1976)の成績をみるのみである.われわれは2例のIgA単独欠損症例の免疫学的検査および末梢血リンパ球でのIgA産生異常部位について検索した.症例1. 44才,男性,肺化膿症および反復性気管支肺感染例.症例2. 52才,男性,腎結核.いずれの症例でも血清,外分泌液ともにIgAを欠損するが,外分泌液にfree secretory componentは正常に存在し,他の体液性,細胞性免疫能には異常を認めなかつた.症例1の外分泌液中には, IgMが高値を呈した.症例2ではIgA欠損が続発性に生じたことが確認されており,経過中に罹患した風疹が原因と推測される. IgA産生に関する末梢血リンパ球機能検索の結果,症例1はB細胞の機能障害とhelper T細胞機能障害の両方を認めたのに対し,症例2では, B細胞機能障害のみを認めた.このことは,同じIgA単独欠損症でも,免疫生物学的には,種々の異なつた障害様式が存在するであろうことを示唆している.

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