日本内科学会雑誌
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巣状糸球体硬化症の臨床病理学的研究-腎病変の経時的推移-
中本 安木田 寛安部 俊男藤岡 正彦飯田 博行服部 信岡田 保典土肥 和紘木部 佳紀杉本 立甫武内 重五郎
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1979 年 68 巻 1 号 p. 62-73

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抄録

微少変化型ネフローゼ症候群との関連が問われている巣状糸球体硬化症は本邦例の検討がまだ少ないようである.ここでは昭和36年来経験した本症9症例とその21生検および2剖検腎について臨床病理学的所見を報告する.膜性腎症および腎炎性変化型以外の原発性ネフローゼ症候群(74例)中の出現頻度は12.2%であつた.多くの症例が高度の浮腫ないし腹水を伴い,顕著なネフローゼ状態を呈し,顕微鏡的血尿および高血圧はおのおの77.8%, 55.6%にみられた.治療により1例が完全寛解に, 3例が不完全寛解I型に改善したが,後者の1例は再燃後腎不全に進行し,死亡した,のこり5例は治療にほとんど反応せず,ネフローゼ状態を持続し, 2例が死亡, 3例が急速に腎機能低下をしめしている.形態学的な悪化要因として, 1)分節状病変の種類, 2)びまん性メサンギウム細胞増生, 3)尿細管・間質障害があげられる.分節状病変のうち,硬化性変化を主体とする症例は泡沫細胞および上皮細胞増生,ことに後者をしめす症例より改善しやすい傾向をしめした. 2例で発症より22, 23日目の早期に皮質内のかなり広い範囲に分節状病変をみとめたが,病変は従来考えられていた以上に発症よりすみやかに皮質内に分布するものと考えられた.結局,本症には微少変化群から移行するものと,当初より本症として発現するものとの2型があるように思われる.本症の診断には分節状病変の確認が重要と考えられる.

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