日本内科学会雑誌
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単クローン性免疫グロブリン血症を伴つた自己免疫性好中球減少症
小鶴 三男中島 泰代蔵田 孝雄金子 周司井林 博
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1979 年 68 巻 10 号 p. 1306-1312

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抄録

好中球減少症(35才,男性)において,副腎皮質ステロイド使用後に増加してきた自己成熟好中球に対する凝集素をLalezariの方法によつて検索し,本症が自己免疫性好中球抗体に起因することを証明した.本例の成熟好中球は末梢血および骨髄中に著減を示したが,骨髄芽球,好中球系の前骨髄球および骨髄球は減少を認めず, Robinson & Pike法による骨髄細胞の軟寒天培養法でコロニー形成細胞(colony forming cell in culture, CFU-C)が, 506/2×10 cellsと正常骨髄細胞(110±46/2×105cells)より著増していた.高γ-グロブリン血症(血清総蛋白6.9g/dl, γ-グロブリン22.8%, IgG 1800mg/dl, IgA 333mg/d1, IgM 516mg/dl, TTT 13.5, ZTT 21.2)を合併し,セルローズアセテート膜電気泳動で尖鋭なピークが認められ,免疫電気泳動でIgM(κ)のM成分と同定された.従つて,好中球自己抗体が単クローン性IgM(κ)にあるのか否かを追究する目的で,患者血清を薄層等電点分画法によつてIgGとIgMに分離した後, Lalezariの方法によつて白血球凝集素を検索したところ,好中球抗体はIgGにあることが判明した.副腎皮質ステロイドに極めて良く反応し,プレドニゾロン40mg/日の投与で1週間後には好中球数396/mm3から2840/mm3と著増した.血清の白血球凝集素は2048倍以上から,ステロイド使用後急速に低下して陰性化した.以上,本邦第1例の自己免疫性好中球減少症を報告すると共に,好中球抗体の検索法,好中球特異抗原,同種新生児好中球減少症, Felty症候群, SLEなどの鑑別診断などについて考察した.

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