日本内科学会雑誌
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臓器反射スペクトル解析による慢性肝疾患患者肝の局所循環動態と酸素代謝動態の検討
林 紀夫
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1979 年 68 巻 12 号 p. 1554-1561

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抄録

生体の分光特性を明らかにしうる臓器反射スペクトル解析装置を開発し基礎的検討を行なうと共に,腹腔鏡施行時に慢性肝疾患患者に応用し,肝の散乱反射スペクトル分析よりin vivo, in situの肝局所血流動態および酸素代謝動態の解析を行なつた. 1)慢性肝疾患では肝病変の進展に伴い,スペクトル強度ΔEr (569-650),みかけのHb酸素飽和率fは低下した. 2)ΔEr (569-650)と血清アルブミン,プロトロンビン時間, ICG15分停滞率の間に有意の相関関係が認められた. 3)ΔEr (569-650)とf×ΔEr (569-650)の間に有意の正の相関関係が認められた. 4) in vivo肝酸素消費量は,慢性肝炎に比し肝硬変で有意に低下していた.以上,ΔEr (569-650)は局所肝血流量,みかけのHb酸素飽和率fは肝における酸素消費の指標になると考えられた.慢性肝疾患では肝病変の進展に伴つて局所肝血流量は減少し,その結果としての酸素供給の低下に対して動脈-肝静脈酸素含量較差を増大することにより,肝酸素消費を維持しようとしているが,肝硬変では完全には代償できず, in vivo肝酸素消費の低下を来すものと考えられた.

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