日本内科学会雑誌
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二つの異なるMたんぱくを認めるIgG(K)型多発性骨髄腫の1例
高山 重光木嶋 祥麿笹岡 拓雄金山 正明
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1979 年 68 巻 12 号 p. 1592-1598

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抄録

ともにIgG (κ)である二つの異なつたMたんぱくを認めるまれな多発性骨髄腫の1例を経験した. Mたんぱくの生化学的検索について述べるとともに,若干の文献的考察を行なつた.症例は77才.食欲不振,腎機能障害にて当科を受診.セルロース・アセテート膜電気泳動上2峰性のM peakを認め,精査のため入院.入院時,血圧166/99mmHg,表在リンパ節は触知されない.二つのM peakはslow γ位とfast γ位にみられた.免疫電気泳動上IgG (κ)に2本のM bow,さらにκ鎖のβ位に1本のM bowとα位に1本沈降線を認めた. IgG 2940mg/dl, IgA, IgMは低値.骨髄像にて骨髄腫細胞31.4%,尿中Bence Jonesたんぱく陽性.骨X線像で,骨打ち抜き像は認められなかつた.以上より多発性骨髄腫と診断した.血清寒天ゲル電気泳動で, fast γ位のMたんぱくは2本のM bandに分離したが,メルカプトエタノール処理で1本となり,同処理でκ鎖α位の沈降線は消失した.ゲル炉過7 S分画の免疫電気泳動にても, IgG (κ)に明瞭な2本のM bowを認め,これらのM bowはspurを形成していた.熱処理後血清の電気泳動で, fast γ位のM peakはα位に移動した.以上より, MたんぱくはIgG (κ)に二つ(slow γ, fast γ),およびκ型Bence Jonesたんぱくと判明し, IgG (κ)のslow γ, fast γのMたんぱくは,互いに異なるものと考えた.さらに, fast γのMたんぱくおよびBence Jonesたんぱくのそれぞれに重合体も存在すると考えた.

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