日本内科学会雑誌
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急激な運動開始によつて誘発される不随意運動発作症の臨床像と発作発現機序
廣瀬 憲文菱川 泰夫
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1979 年 68 巻 2 号 p. 161-175

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抄録

急激な運動の開始によつて誘発される不随意運動発作症(dystonic seizure induced by movement)は反射性てんかんとの関連が論議されている.本症の病態を解明するために,本症の臨床像を検索し,発作の発現機序を電気生理学的に検討した.発作は,検索した35例の全例で自発運動に関連して起こり,その持続は数十秒から1分以内であり,発作の多くは四肢,躯幹,時には顔面,眼球に拡がつたが,発作中に意識消失を認めるものはなかつた. 9例では発作の起こる身体側が交代した.本症の家族歴は20.6%の症例に認められたが,てんかんの家族歴を認めるものはなく,てんかんとの合併例は1例のみであつた.発作間歇期の脳波にてんかん性発作波を認めたものは34例中の2例であつた.この2例を含めた14例の発作中の脳波にはてんかん性発作波を認めなかつた.種々の刺激による発作誘発効果と発作時の四肢の筋活動を8例の患者で検索した.発作は下肢の自発運動で最も容易に誘発されたが,四肢の受動運動や振動刺激では誘発されなかつた.また,自発運動を命じて発作を誘発した場合,運動開始より平均4.2秒後に発作が発現した.運動の開始以前や開始と同時に発作が起こつた例はなかつた.以上より,本症は運動に伴う求心性の感覚刺激により惹起される反射性てんかんではなくて,自発運動の遂行に必要な脳中枢の統合機能の一過性の破綻により生じる発作であり,不随意運動症の一種であるとの見解を提出した.

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