日本内科学会雑誌
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頚部の巨大リンパ節腫大を初発症状としたmalignant gonadal stromal tumorの1剖検例
嘉山 保美江口 とめ榎本 哲葉山 隆東野 広也北見 翼岩淵 定東海 俊英守田 浩一天木 一太堀内 篤
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1979 年 68 巻 3 号 p. 302-306

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抄録

44才,男.左頚部リンパ節腫脹を主訴として入院し,同リンパ節生検の結果では, metastasis of undifferenciated carcinomaであつた.入院後,精査施行したが,原発巣は不明で,泌尿器科的にも異常はみられなかつた.左頚部リンパ節スタンプ標本で,細網肉腫も疑われ,治療診断の目的で, VEMP療法を施行したところ,著効を示し退院した.しかし, 3年6カ月後,再発が疑われ,再入院となつた.入院経過中意識障害,痙〓,弛緩性麻痺が出現し, VEP療法, methotrexate, cytosin arabinosede髄注などを施行したが効果なく死亡した.病理診断ではmalignant gonadal stromal tumorであつた. gonadal stromal tumorは,人体では非常に希で,全睾丸腫瘍の約2%弱でほとんど良性である.臨床症状としては,睾丸の腫脹,疼痛,女性化乳房症が出現するといわれ,内分泌的には尿中estrogen, androgen, pregnandiolなどの上昇を認めることがあると報告されているが,本症例は,末期に睾丸の腫脹を認め,内分泌的には検索していない.本症例は,転移巣である左頚部リンパ節腫脹が主体で,入院時,原発巣である右睾丸は,泌尿器科的に自覚的,他覚的に異常が認められなかつた.一般的には化学療法は期待できないといわれるが,本症例では, VEMP療法に著効を示した.このことよりmalignant gonadal stromal tumorのある症例ではVEMP療法が効果があると考えられた. gonadal stromal tumorは調べ得た限り本邦で4例であるが,いずれも良性であり,悪性は本症例が本邦第1例と思われる.

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