日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
Raji細胞免疫蛍光法による血中免疫複合体定量法の開発とループス腎炎における血中免疫複合体定量の臨床的意義
吉田 雅治
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 68 巻 9 号 p. 1089-1098

詳細
抄録

ループス腎炎がimmune complex型腎炎であることは周知の事実である.そこで,血中免疫複合体(血中IC)のレベルと,ループス腎炎の発症,進行,組織像などとの関連についての検討が必要となる.しかし,この点についての詳細な検討はまだなされていない.我々は,第1に新しい血中IC定量法としてRaji細胞免疫蛍光法を開発し,変性ヒトIgG 4μg/ml以上の濃度に相当する血中ICの定量に成功した.この方法はルーチンの血中IC定量法として用いることができる.第2に,本法を用いてループス腎炎を中心として211例の血中ICの測定を行なつた.一次性糸球体腎炎が59例中12例(21%)の陽性率にとどまつたのに対して,ループス腎炎が37例中33例(89%)と最も高率に陽性を示した.この事実は,本法がループス腎炎の血中ICの検出法としてすぐれていることを意味する.本法を用いてループス腎炎5例において,血中ICレベルを経時的に測定し,臨床経過,組織像,他の免疫学的検査との関係を調べたところ, 1)血中ICレベルは抗DNA抗体価と有意の相関を示すが,血清補体価とは相関がない. 2)抗DNA抗体価が高いのに血中IC値が低い例がある. 3)血中ICレベルはステロイド投与量と平行して変動する. 4)血中ICレベルの高い例ほど組織障害性が強い,などの事実を認めた.ループス腎炎における血中IC定量は,組織障害性の推定,ステロイド薬の適正な投与量の決定に重要な臨床的意義を有するものと思われる.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top