日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
慢性ベリリウム症の成因に関する臨床的ならびに実験的研究
岡田 良三
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 68 巻 9 号 p. 1099-1109

詳細
抄録

慢性ベリリウム症は細胞性免疫の関与した予後不良の肺疾患である.その発症予知の指標を検討するため,自験の1例を含む患者5例の検討,ベリリウム曝露健康作業者98名のfollow up study,および細胞性免疫に関する指標の裏付けとなる,基礎的なモルモットに対するベリリウム感作実験を行なつた.その結果,慢性ベリリウム症の臨床病態の特徴として,胸部X線像上の小結節性,線状もしくは索状影の混在,両側肺門リンパ節腫大,肺機能面で肺拡散能力の障害および拘束性障害,組織学的所見としてベリリウム検出を伴う肉芽腫性病変の存在の他に, Na2BeF4によるパッチテスト陽性化,ツ反応陰性化,マクロファージ遊走阻止試験(MIT)陽性, IgG, IgAの上昇などがあげられた.ベリリウム曝露健康作業者のfollow up studyでは,パッチテスト陽性群は陰性群に比し,ツ反応陽性率, %MMF, 1秒率(T), %CO肺拡散能力が低く, MIT陽性率は高い結果となつた.以上の結果から,ベリリウムによるパッチテストの陽性化とツ反応陰性化, MIT陽性,肺拡散能力の低下が,胸部X線像異常出現前に注目すべき項目であり,胸部X線所見とあわせ総括することにより要注意者をチェックできることがわかつた.あわせて施行したリンパ球刺激試験(LST)については,予知に対する感度は悪く,むしろ発症の確証を示す一つの指標に過ぎないと判断された.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top