日本内科学会雑誌
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選択的低アルドステロン症の1例
渡部 秀人本多 正信須藤 祐正泉 洋一植田 康久土屋 真井上 毅白土 農寿小林 功波多野 道信
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1980 年 69 巻 10 号 p. 1333-1339

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抄録

低レニン,低アルドステロン症と高血圧症を示し,各種ホルモン刺激試験を施行したところ選択的低アルドステロン症と考えられる1例を経験したので報告する.症例は50才の男性で, 20才時に高血圧を指摘されるもそのまま放置,このたび精査目的にて入院となつた.入院時血漿レニン活性(PRA)は0.3ng/ml/h,血漿アルドステロン濃度(PAC)は1.5ng/dlと低値を示したので各種ホルモン刺激試験を施行した. (1) furosemide 0.7mg/kg静注+立位2時間負荷では, PRAが0.4ng/ml/hから1.4ng/ml/hと上昇し, PACは3.4ng/dlから6.1ng/dlに上昇した.この時のACTHは17.6pg/mlから23.5pg/mlと上昇を示した. (2) angiotensin II 8ng/kg/min 45分間静脈内投与では, PRAは減少傾向を示し, PACは前3.4ng/dl, 45分後2.0ng/dlと低値のままであつた. (3) KCI 0.33mEq/kg/h, 1時間静脈内投与では, PRAおよびPACは低値のままであつた. (4) ACTH 25単位4時間静脈内投与では, PRAは減少傾向を示し, PACは前2.0ng/dl, 1時間後2.7ng/dl, 2時間後2.6ng/dl, 4時間後10.2ng/dlと4時間目に上昇を示した. corticosteroneとcortisolは漸増性の上昇を示した. (5)日内変動では, pm 4:00, am 0:00, am 6:00でそれぞれPRAは0.3, 0.1, 1.4ng/ml/h, PACは1.5, 1.5, 1.5ng/dlと低値のままであつた. corticosteroneは119, 196, 128ng/dlであつた.本例のPACは各種刺激試験に低反応を示し, corticosteroneは反応を示していることから,選択的低アルドステロン症と考えられた.

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