日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
うつ血性心不全患者における血中カテコールアミンの肝での代謝
小林 公也
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 69 巻 11 号 p. 1424-1431

詳細
抄録
肝はcatechol-O-methyltransferase, monoamine oxidaseを多量に含み,循環血中のcatecholamine (CA)の不活化に一定の役割を演じていると考えられる.今回ヒトの肝での血中CAの代謝率を調べる目的で,肝静脈血と動脈血を同時採血し,おのおのの血中CA値を測定した.対象は高血圧症を含む種々の心疾患患者38例で,血中CA値はRenzini-三浦変法によりTHI法で測定した.肝のCA代謝率は, (動脈血CA値-肝静脈血CA値)⁄動脈血CA値×100(%)で求め,さらに心内圧,熱希釈法で心拍出量, ICG法で肝血流量を同時に測定した.症例を肝正常群28例,うつ血性肝腫大群8例,褐色細胞腫2例に分け検討した.肝のCA代謝率は肝正常群ではnorepinephrine (NE) 71.3±2.3 (SE)%, epinephrine (E) 80.8±2.1%であり,肝腫大群ではNE33.2±4.4%, E30.9±7.8%と著明に低下していた.肝のNEおよびE代謝率は肺動脈楔入平均圧,肺動脈拡張末期圧とおのおの負の相関を示し,肝のCA代謝率は心不全の悪化にほぼ比例して低下すると考えられた.褐色細胞腫患者では高い血中CA値を示す一方,肝のCA代謝率は正常で多量のCAが不活化されており,正常の肝でのCA代謝の容量は非常に大きいと考えられた.循環血中のCA濃度は体内でのCAの分泌量と消失量との総和であり,うつ血性心不全患者における血中CA値にも,肝のCA代謝率の低下が一部関与している可能性が考えられる.
著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top