日本内科学会雑誌
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慢性活動性肝炎における肝特異抗原をめぐる免疫学的肝細胞障害の発生機構特に活性化マクロファージおよびADCC反応を中心にして
溝口 靖紘志波 孝東森 俊博大西 文明門奈 丈之山本 祐夫森沢 成司
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1980 年 69 巻 12 号 p. 1609-1617

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抄録

肝細胞膜に局在する肝特異抗原(LSP)を出発点とする免疫性肝障害の発生機構を,活性化マクロファージおよびADCC反応を中心にして新しい免疫学的手法を用いて検討した.慢性活動性肝炎患者の末梢血リンパ球をLSPで刺激するとリンパ球幼若化反応が誘導され,マクロファージ活性化因子(MAF)の産生が認められる.このMAFで活性化されたマクロファージまたはその産生物は肝細胞に対して障害性に作用する.活性化マクロファージの培養上清をゲル〓過およびイオン交換クロマトグラフィーで分画すると,蛋白質性と考えられる肝細胞障害因子の存在が認められた.また慢性活動性肝炎患者の血清中には高率に,肝細胞膜抗原に対する抗体が存在することをADCC反応で検出しえた.一方,上記の活性化マクロファージの培養上清中には, ADCC反応に関与するK細胞の増殖もしくは活性増強を促進する因子が存在することを認めた.これらのことより慢性活動性肝炎においては,肝細胞膜抗原をめぐり,体液性抗体,リンパ球,マクロファージなどを介して多彩なる免疫反応が生起していると考えられる.

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