日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
右頚部に発生した異所性褐色細胞腫の1例
飯村 攻湯浅 壽幸深山 明義久田 憲雄野原 邦彦宮原 光夫
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 69 巻 5 号 p. 567-573

詳細
抄録

右頚(顎下)部に発生した異所性褐色細胞腫の1例を報告した.症例は18才,男子高校生で,発作性の動悸,頭痛,発汗を主訴とし入院.発作性の高血圧,頻脈を認め,尿中noradrenaline 554.7~700.3μg/d,発作時血中10.56ng/ml,直後の1時間尿中617.7μg/hと著増し, 1日尿中normetanephrineも高値を示したが, adrenaline, metanephrineは正常域にあつた.当初,後腹膜気体撮影+経静脈腎盂撮影,血管造影,コンピュ一ター断層撮影(CTスキャン)でいずれも左副腎部に腫瘍様陰影が認められ,開腹,右側も含あ精査したが該当する腫瘍は見出しえなかつた.そこでより広範な静脈内部位別血中catecholamines濃度測定の結果,右頚部の異所性褐色細胞腫が疑われ, CTスキャンにより右顎下部に,次いで撰択的血管造影により右外頚動脈領域に腫瘍を見出し,摘出術を施行.腫瘍は右頚動脈分岐部の内側に,動脈とは遊離して存在, 6×3.6×3.6cm, 38g.組織学的には,クロム親和性で褐色細胞腫の像を呈し,腫瘍組織のcatecholamines含量はnoradrenaline 3,323.5μg/g, adrenaline 37.2μg/g, dopamine 20.6μg/gであつた.本症例はまた心房中隔欠損症,僧帽弁逸脱も示唆され,術前糖負荷試験で境界域を示し,発作時の心電図には心室補捉を伴う房室解離とWenckebach型房室ブロックをみた.術後経過は順調で,血・尿中のcatecholaminesも正常化した.頚部発生の異所性褐色細胞腫は極めて希で,現在まで他に欧米で1例,本邦で1例の報告をみるのみである.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top