日本内科学会雑誌
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広範な腹腔内リンパ節転移を認めた抗利尿ホルモン(ADH),カルシトニンおよびオキシトシン産生肺癌の1例
重富 秀一小川 さつき工藤 信一高橋 重雄福地 総逸
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1980 年 69 巻 5 号 p. 580-586

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抄録

患者は62才の男性.主訴は低ナトリウム血症の精査.胸部X線像上右肺に異常陰影を認めたため,本学放射線科入院.気管支造影,鎖骨上窩リンパ節および口蓋扁桃生検により燕麦細胞癌と診断,放射線療法を行なつた. 4,000R照射後,腫瘍陰影は消失したが,その頃から全身倦怠感,食欲不振が出現,血清ナトリウムが著しい低値を示したため当科転科した.血清ナトリウム120mEq/l,血清カリウム4.5mEq/l,血清クロール87mEq/l,血漿浸透圧249mOsm/l,尿浸透圧701mOsm/l,血漿レニン活性2.3ng/ml/h,腎および副腎皮質機能正常.血漿ADH含量は16.4pg/mlと高値であり,飲水1,000ml後も抑制されなかつた.以上よりSIADHと診断した.さらに本症例では血漿オキシトシン含量が20.8pg/mlと著しい高値を示した.血中ACTH, PTHおよびカルシトニンは正常範囲であつた. 600m1/日の水制限により血漿浸透圧は270~280mOsm/lに改善し,抗癌薬投与で一時全身状態は改善したが,癌性腹膜炎およびグラム陰性桿菌による肺炎を併発し死亡した.剖検により肝,腎などへの転移と広範な腹腔内リンパ節への転移および大網部の巨大な腫瘤を認めた.腫瘍組織よりADH,オキシトシンおよびカルシトニンが高濃度に検出された.本症例はADH産生肺癌によるSIADHであつて,オキシトシンおよびカルシトニンも同時に産生していたきわめてまれな症例である.特に,オキシトシン産生腫瘍は本邦では現在まで報告されておらず,本症例が本邦第1例である.

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