日本内科学会雑誌
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家族性アミロイドポリニューロパチーの臨床,病態生理および治療に関する研究
荒木 淑郎栗原 照幸栗林 忠信俵 哲
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1980 年 69 巻 8 号 p. 943-950

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抄録

本研究では,熊本県の家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP) 39名を対象として,臨床像,末梢神経のM波,内分泌機能,アミロイド線維蛋白および治療について検討を加えた.臨床像は,ポルトガル人のFAPに類似し,常染色体優性の遺伝様式を示し,中年に発症し,下肢から上行する感覚優位のポリニューロパチー,自律神経障害および全身のやせを特徴とする. FAP患者のM波の振幅は,病初期より著しい低下を示し, MCVがまだborderline程度の時期から著明な低下がみられた. FAPでは, MCVよりM波の振幅の低下が早期診断に有用である. FAPでは,甲状腺腫は, 39例中17例(43.6%)にみられ,また血中T3の低下,およびTRHに対するTSH反応の遅延がみられた. FAPでは,潜在性に甲状腺機能低下状態にあることが明らかにされた. FAPの発病早期の陰萎は,性腺機能の正常より,自律神経障害に起因するものと考える. FAP患者の剖検腎より抽出したアミロイド線維の蛋白は,分子量14,000で,アミノ酸分析から, AL蛋白およびAA蛋白と異る特異な蛋白であることを明らかにした. FAP患者8名に対してのdimethyl sulfoxide (DMSO)の下腿塗擦療法では,臨床症状の改善(2例)と末梢神経伝導速度の改善(3例)がみられた.

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