日本内科学会雑誌
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運動誘発性喘息発症要因における生化学的検討
加藤 政司高木 健三佐竹 辰夫
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1980 年 69 巻 9 号 p. 1068-1076

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抄録

気管支喘息患者にsubmaximumの運動を負荷して喘息発作を誘発させ,発作の程度により3群に分類した.そして安静時,運動後5分, 15分に採血し,血漿cyclic-nucleotides, prostaglandins, norepinephrine, dopamine-β-hydroxylaseを測定し,健常群と比較検討した.その結果,健常群はprostaglandin Eが軽度低下し, cyclic-GMPはcyclic-AMPと同様に中等度増加するのに対し,重症発作誘発群はprostaglandin Eはほとんど増加せず, cyclic-GMPは著増を示した.一方喘息患者であつても発作を誘発しなかつた群はまずprostaglandin Eが著増し,その後のcyclic-GMPは微増したにとどまつた.以上の結果より,気管支喘息患者がsubmaximumの運動をした場合,何らかのnegative feedbackが作動しない限り喘息発作を誘発する可能性があるが, prostaglandin Eが著増した患者ではcyclic-GMPの産生が抑制されて,喘息発作の誘発を阻止するものと推測された.一方,健常群では運動後のcyclic-GMP/cyclic-AMP比が安静時とかわらず, prostaglandin Eも増加しなかつた.すなわち,健常人では運動がnegative feedback機構を作動させるだけのtriggerとなり得ないためと思われた.

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