日本内科学会雑誌
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細菌性髄膜炎にherpes simplex virus抗体価の上昇を伴つた選択的IgA欠損症の1例
小林 高義田幸 健司馬目 太三柳沢 信夫塚越 廣高月 清樋端 敏生
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1980 年 69 巻 9 号 p. 1096-1101

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抄録

27才,男.幼少時よりよく風邪に罹患しやすく, 18才以降2~3カ月に1回発熱を繰り返した.昭和53年3月24日寒け,発熱,頭痛, 4日後,悪心,嘔吐が出現し,信州大学医学部第三内科へ入院.体温39°C.軽度の咳,喀痰,咽頭の発赤,下痢があり,神経学的には,意識は清明,髄膜刺激症状として,頭痛,嘔吐,軽度項部硬直, Kernig徴候を認めた.髄液は圧正常,細胞710 (多核球優位),蛋白103mg/dl,糖44mg/dl.多核球優位の細胞増加,髄液糖低下より,細菌は検出されなかつたが細菌性髄膜炎が最も疑われた.発症1週間後臨床症状は消失. herpes simplex virus血清抗体価(CF)は,発症時32倍, 5週後128倍, 12週後32倍となり抗体価の推移よりHSV感染も合併していたと考えた.本例は,血清IgA 5mg/dl以下と選択的IgA欠損症があり, pokeweed mitogenを加えたT・B細胞の混合培養試験では,本例の選択的IgA欠損症は, R細胞自身の分化障害によると考えられた.選択的IgA欠損症にHSV感染と細菌感染の合併の報告はまれで,免疫不全と複合感染との関連で興味ある症例と思われた.

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