日本内科学会雑誌
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未治療糖尿病患者における血漿遊離短鎖脂肪酸(C2-C5)測定の臨床的意義
斎藤 済美
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1981 年 70 巻 12 号 p. 1673-1683

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抄録

血漿遊離短鎖脂肪酸(炭素数C2-C5)をガスクロマトグラフによつて測定し,未治療糖尿病患者群(I群;空腹時血糖値200mg/dl以下n=12, II群; 200~300mg/dl n=16, III群; 300~500mg/dl n=5)では,健常者対照群(N群n=12)および甲状腺機能亢進症患者群(HT群n=16)に比してpropionate濃度の著明な上昇(I群133±24**μg/dl, II群123±16***μg/dl, III群121±25*μg/dl, N群54±14μg/dl, HT群55±9μg/dl, Mean±SE, ***P<0.01, **p<0.02, *P<0.05vs. N群),および空腹時血糖値と相関したacetate濃度の上昇(r=0.5261 P<0.01 n=33)とを認めた.これらの所見は,糖尿病患者群ではacetyl-CoA carboxylase, acetyl-CoA synthetaseなどの諸酵素の障害および分枝鎖アミノ酸代謝の偏位の結果, acetyl-CoA, propionyl-CoAの低利用,活性化されていない遊離のacetateおよびpropionateの血中停滞を生じたものと考えられた.また,血漿遊離アミノ酸をアミノ酸自動分析計によつて測定し,糖尿病患者群においては,重症患者群での,総遊離アミノ酸・proline (P<0.05vs. N群)およびglycine (P<0.01)濃度低下の他に,側鎖型短鎖脂肪酸濃度と分枝鎖アミノ酸濃度との間に相関関係が見られた(r=0.4822, P<0.05, n=18)ことから,これらが多くの代謝性要因のもとにおいて共に変動し,分枝鎖アミノ酸代謝の偏位があることを臨床的に示した.以上の所見に基づき,血漿遊離短鎖脂肪酸測定の意義についてのべ,糖尿病状態を中心として考察した.

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