日本内科学会雑誌
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一過性神経脱落症状を呈した高血圧性
吉成 元孝藤島 正敏柊山 幸志郎井上 謙次郎尾前 照雄
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1981 年 70 巻 12 号 p. 1750-1755

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抄録

悪性高血圧症患者に一過性神経脱落症状がみられ,それが脳出血によるものであつたと考えられる1例を報告した.症例は50才の男で, 7年の高血圧歴を有する.突然の拍動性後頭部痛と左半身不全麻痺で発症した.血圧は200/100mmHg,眼底にはK-W IV度の所見が認められた.意識障害はなく,麻痺は12時間以内に消失した.一過性脳虚血発作の症状を伴つた悪性高血圧と診断され,降圧薬とアスピリンが投与された.第13病日には血圧は160/84mmHgに下降し,後頭部痛も消失した.しかし,眼底所見が改善されないので,第21病日に精査のため当科へ入院した.入院時,神経学的には何ら異常はなく,本態性高血圧の悪性期と診断された.入院当初の髄液初圧280mmH2Oで,キサントクロミーを示した.第35病日のCTで右側基底核putamenを中心とした部分に造影剤で輪状に増強される等吸収域を認め,大きさは計測値で2.5×4cmあり,第53病日にはその領域は縮小した.第39病日の脳血管造影では,右内頸動脈写にてvenous angle部の左側偏位とthalamostriate veinの内側への圧排を認め,右基底核部前頭葉領域の無血管野と考えられた.以上の所見より,発症時の一過性左半身不全麻痺は脳出血によると考えられた. CTの導入により非定型的脳出血が知られるようになつたが,本例もその1例と考える.

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