1981 年 70 巻 3 号 p. 429-434
17才,高校3年男子. 10Kmマラソンに参加.走行中,腰背部および両下肢の疼痛が出現したが完走.翌日になつても上記疼痛は持続し,赤褐色尿の排泄をみた.以降,ほぼ無尿の状態となり,悪心,嘔吐を伴う様になつたため, 4日後当院に救急入院した.入院時,発熱,血圧上昇,腰肢帯筋痛を認めた.検査にてBUN 115.1mg/dl, creatinine 10.5mg/dl, K+ 6.21mEq/l.またCPK (16040mlU, MM型)を初めとする筋逸脱酵素の著明な高値を認め,血中ミオグロビン値は281ng/m1と上昇を示した.マラソンによつてラブドミオリーシスによるミオグロビン血症を生じ,それに続発した急性腎不全と考えられた.血液透析溶療12回ののち,透析離脱となり,軽快退院した.ラブドミオリーシスの病因について文献的考察を加え,さらに代謝性ミオパチー鑑別の目的で,阻血下運動負荷試験を施行した.また本症は予後良好であるとする報告例が多く,早期診断,治療の必要性が認識された.