日本内科学会雑誌
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IgA単独欠損症に肺癌を合併した1例
菱谷 好高吉矢 尚子茂在 敏司加納 正
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1981 年 70 巻 3 号 p. 435-439

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抄録

原発性免疫不全症の患者に悪性腫瘍が高率に発生することが注目されている.著者らは, IgA単独欠損症に肺癌(未分化型腺癌)を合併した例を経験したので報告する.症例は50才,女性で,呼吸困難,咳嗽で来院,胸部X線像にて右胸水貯留を認め,気管支造影像および気管支生検により肺癌(未分化型腺癌)と診断された.また血清中のIgAの選択的欠損,分泌液中の分泌型lgAの著減がみられ, IgA単独欠損症と診断された,本例におけるように,一般にIgA単独欠損症では分泌型IgAも欠損していることが多く,また消化管,気道など正常では分泌型1gAが存在する部位からの癌の発生が多い.このことよりIgA単独欠損症における癌の発生の機序として,発癌ウイルスなどに対する免疫学的防御の欠陥,効果的な抗原処理能の欠陥による抗原の慢性刺激などが考えられた.現在までにIgA単独欠損症に合併した悪性腫瘍の報告は12例みられるが,本邦においてはHodgkin病,子宮癌の合併例があるのみで,肺癌を合併した報告はない.

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