日本内科学会雑誌
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中枢神経感染症における髄液細胞の形態と機能に関する研究
今西 康二
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1981 年 70 巻 7 号 p. 984-991

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抄録

中枢神経感染症の髄液細胞の形態と機能について検索し,疾病の病態および鑑別診断に役立つか否かについて検討した.独自に考案した浮遊細胞収集法は細胞の回収率,形態保存ともに良好であつた.細胞組成では小リンパ球はウイルス性髄膜炎で,マクロファージは非感染性神経疾患で,多核球は化膿性髄膜炎で,髄膜剥離細胞は結核性髄膜炎でそれぞれ優位であつた. lysosomal enzyme (acid-phosphatase, β-galactosidase)はマクロファージ系細胞で活性がみられ,種々の疾患で陽性であつたが,特に化膿性および結核性髄膜炎で高活性を示し臨床経過とよく相関していて補助診断価値があつた.また非感染性神経疾患にも活性がみられ, lysosomal enzymeは感染症に特異的なものではなかつた. nitroblue tetrazolium還元はマクロファージ系細胞および多核球でみられた.髄液細胞ではむしろマクロファージ系細胞により還元能の亢進を認め,その還元能の程度は中枢神経感染症の病勢とよく相関していた.また髄液細胞のNBT還元能は定量的にも測定可能であつた.多核球よりマクロファージ系細胞にこより還元能があることから,多核球が多く出現する病態の少ない中枢神経疾患においてマクロファージ系細胞でのNBT還元能の解析は,疾病の病態を知る上で重要と思われた.

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