日本内科学会雑誌
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ラジオイムノアッセイによる血中ヒト心筋ミオシン軽鎖Iの測定および急性心筋硬塞症におけるその臨床的意義
永井 良三矢崎 義雄小坂 樹徳
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1981 年 70 巻 8 号 p. 1098-1104

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抄録

心筋の構造蛋白であるミオシンのサブユニットの一つ,軽鎖Iをヒト心筋より抽出精製し,ラジオイムノアッセイによる軽鎖Iの血中での測定法を開発し,さらに急性心筋硬塞発症後の血中軽鎖I値の変動を検討した.抗軽鎖I抗体は,モルモットを精製した軽鎖Iにて免疫することにより作製した.軽鎖IはクロラミンT法により125Iで標識し, B/F分離は二抗体法を用いた.アッセイの感度は0.2ng,骨格筋軽鎖との交叉反応は10.2%,成人健常者30名の血中軽鎖I値は3.7±0.9ng/ml(平均±標準偏差)であつた. 24例の急性心筋硬塞症において軽鎖Iは発作後4~16時間以内に上昇をはじめ, 30~144時間後に最高値となり(35.0±14.1ng/ml), 7~16日間高値を続け,各種の心筋酵素やミオグロビンとは全く異なる特異な経時的変動を示した.また前壁硬塞例の中で,異常Q波がV1-V3に出現した3例と, IおよびV1-V5に出現した5例を比較すると,後者において血中軽鎖Iの最高値, 24時間値, 7日値は高値を示した.血中軽鎖Iの測定は心筋硬塞の急性期のみでなく,発作後時間の経過した症例においても診断に有用であり,またこれにより硬塞の大きさを推定できる可能姓があると考えられる.

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