日本内科学会雑誌
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Rifampicin再投与による溶血を伴つた急性腎不全の1例
飯田 博行高田 正信水村 泰治杉本 恒明藤木 宏
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1981 年 70 巻 8 号 p. 1137-1141

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抄録

Rifampicin (RFP)の再投与により,溶血を伴う急性腎不全をきたした1例を報告する.症例は69才,女性.主訴は乏尿,悪心. 1977年7月肺結核の再発にて某病院で, KM, INH, RFPの投与が開始された. 1978年7月からRFPは450mg週2回の間歇投与となつたが, RFPの投与日に限つて微熱を認めたため同年12月中止された. 1980年1月にRFP450mg週2回の再投与が行なわれたところ, 1月14日4回目の服薬後急に胸内苦悶,嘔吐,悪寒,発熱(39°C)が出現し乏尿となつた.その後2日間尿は暗赤色調で,間接ビリルビン0.8mg/dl, LDH6000単位と上昇がみられた.乏尿,悪心が続き,高窒素血症を認めたため第6病日当科に転院した.検査成績では網状赤血球は22‰と増加,尿は等張で, Na濃度の上昇, β2-microglobulinの排泄増加を認めた.直接Coombs試験が陽性であつた.直ちに透析療法を開始したところ,第10病日より利尿期に入り,腎機能は漸次回復した.発症2カ月後に施行した経皮的腎生検では尿細管上皮細胞の脱落,浮腫が軽度にみられ,上皮の再生像も散在していた.間質の一部には若干の細胞浸潤が認められた.蛍光抗体法は全て陰性であつた. RFPに対する薬物アレルギー試験では,皮膚貼布試験,白血球遊走阻止試験は陰性であつたが,間接グロブリン試験によるRFP抗体価は512倍で陽性であつた.本例ではRFPの再投与により免疫学的機序が働いて,急性腎不全および溶血が同時に起こつたものと考えられた.

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