日本内科学会雑誌
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横断性脊髓障害を呈し長期観察し得たsystemic lupus erythematosus (SLE)の1例
横山 芳正河野 保佐野 千寿子
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1981 年 70 巻 8 号 p. 1153-1158

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抄録

横断性脊髄障害を初期症状とし, 10年間経過を観察した希なSLEの1例を報告する.症例は67才,家婦. 57才時,腹痛,下肢の脱力につづいてTh8-9レベルの脊髄障害を来し,急激に対麻痺,膀胱直腸障害が出現した.同時に右手指の末梢神経障害を併発した.髄液は初圧140mmH2O,細胞数27/mm3,蛋白30mg/dl,糖85mg/dl, Cl 127mEq/l,脊髄障害発症直後にLE細胞を証明し,既往に多発性関節炎を認め膠原病の診断のもとにステロイド治療を行なつたが,脊髄障害は増悪と寛解を繰り返し脱髄性疾患に類似した病態を示した.その後10年間の経過中に腎障害,脱毛,抗核抗体陽性を認めSLEの診断が確定した.本症例の経過中,視神経網膜炎,末梢神経障害,横断性脊髄障害が出現したが,これらの神経症状はすべてステロイド治療で改善した.考案で成因不明の神経症状の発現に際し膠原病を考えるべきことを強調し, CNS・SLEと多発性硬化症の関係について文献的考察を加え,本症例では長期観察により臨床的にSLEの診断が確定したことを指摘した.

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