日本内科学会雑誌
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本態性高血圧患者における脳脊髄液ナトリウム濃度と血圧食塩依存群と非依存群の比較
後藤 英司
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1982 年 71 巻 11 号 p. 1528-1533

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抄録

入院未治療本態性高血圧患者34例(男20例,女14例,年令32~58才,入院時血圧平均170/107mmHg, WHOI~II期)を対象とし,食塩制限(3g/日)と負荷(25g/日)を施行し,食塩負荷に伴う平均血圧の上昇が10%以上の食塩依存群(18例)と10%未満の食塩非依存群(16例)にわけ,脳脊髄液Na濃度と1血圧,尿1日Na排泄量,血漿レニン活性などとの関係を比較した.食塩依存群の髄液Na濃度は,食塩制限時の144.0±0.6(SE)mEq/lに比べ負荷時には151.5±0.8と有意(p<0.001)に高い値を示したのに対し,非依存群の髄液Na濃度は,食塩制限時と負荷時とで有意差を認めなかつた.食塩依存群の髄液Na濃度は,平均血圧値とr=0.66(p<0.005),尿Na排泄量とr=0.82(P<0.001)と有意の正の相関を示し,血漿レニン活性とはr=-0.72(P<0.005)の有意の負の相関を示した.しかし,非依存群ではかかる関係を認めなかつた.以上の成績から,食塩依存群における食塩負荷に伴う血圧の上昇には,中枢でのNaの貯留が関与している可能性が示唆される.

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