日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
高血圧を呈するShy-Drager症候群について
佐々木 和雄村林 秀哉馬場 恒春青柳 和美松永 宗雄武部 和夫
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 71 巻 12 号 p. 1703-1712

詳細
抄録

著明な起立性低血圧を主症状とするShy-Drager症候群9例において, 3例に臥位時に極めて動揺性に富み,かつ特に拡張期血圧が高い傾向にある高血圧が観察された.高血圧合併例と非合併例の臨床的相違点について,また本症候群の高血圧の成因について明らかにするため種々の検索を行なつた.臨床的観察では高血圧合併例,非合併例の罹病期間に差はみられず,非合併例が疾病の進行とともに高血圧を合併した例は今日まで観察されていない.また高血圧合併例は病初期から高血圧を合併していたと考えられるが,疾病の進行に伴い臥床生活が強いられるにつれて,著明な高血圧の変動および高血圧がみられなくなり,歩行や体位変換が高血圧発症に関与している可能性が示唆された.体位変換に伴う種々の昇圧物質(血漿norepinephrine,血漿レニン活性)の変動と,それらの外因性負荷時の昇圧反応を観察すると,高血圧合併例において著明な昇圧反応がみられた.また血漿norepinephrine濃度や薬理学的自律神経系検査は,高血圧合併例が節前および節後交感神経障害を有することを示唆していた.以上のことから,節後交感神経障害をも有する本症候群例では,体位変動に伴うわずかな血漿norepinephrineやangiotensin IIの変動がそれに対する細動脈receptorのhypersensitivityとともに,本症候群での動揺性に富む臥位時の高血圧をひきおこしている可能性が示唆された.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top