日本内科学会雑誌
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重篤な心血管系合併症を伴つた褐色細胞腫の3治験例症例報告と文献的考察
祢津 光廣三浦 幸雄安達 真樹木村 忍安達 みち子富岡 洋吉永 馨三輪 勣薬袋 興児斎藤 敬太郎
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1982 年 71 巻 12 号 p. 1734-1739

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抄録

重篤な心血管系合併症を伴つた褐色細胞腫の3治験例を報告し,その臨床上の問題点について文献的考察を加えた.症例1: 27才,女性. 2ヵ月前,急に咳嗽を伴う呼吸困難が出現し,肺炎として近医に入院した.各種の加療を受けたが軽快せず,当科に転入院した.入院時,高血圧,肺うつ血,中心静脈圧上昇および血漿と尿中カテコールアミン(CA)の著増を認め,褐色細胞腫による急性心不全と診断された. αおよびβ遮断薬の投与により,各症状は軽快し,手術により左副腎腫瘍が摘出された.症例2: 47才,主婦. 5年前から,動悸や多汗を認めたが放置していた. 2日前に,突然意識障害を伴う右側不全麻痺が出現し,脳出血と診断された.経過中,血漿と尿中CA値の著増を認め,褐色細胞腫と診断された.手術により右副腎腫瘍が摘出され,神経症状を含め各臨床所見は正常化した.症例3: 13才,男子中学生. 1年前から,疲労感が持続し, 2ヵ月前から,頭痛や動悸が出没してきた, 1週間前,激しい頭痛のため近医に入院した.入院中,悪心嘔吐を伴う意識障害が出現し,血圧が260/110と上昇した.レギチン静注により,血圧は下降し,意識を回復したる. αおよびβ遮断薬により発作性症状は消失し,手術により左副腎部腫瘍が摘出された.高血圧性緊急症では,褐色細胞腫の可能性を念頭において適切な治療を行なう必要がある.

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